難破船まじやみの冒険

迷いながら日々生きています

「黒」の記憶とひとりごと

人間はとても欲張りな生き物だと思う。


平日にあっては土日を羨み、土日にあっては夏休みに恋焦がれ、夏休みにあっては不労所得で毎日遊んで暮らしたいと途方もない理想を語りたくなる。

金欠の月末ではコンビニで数百円のアイスを買うのを我慢しているのに、給料日を過ぎればアイス何十個分の額のディナーを食べに行きたいなどと嘯く。

人間は自身の欠乏には敏感なわりに、自分が持っているものにはあまり目がいかない生き物なのかもしれない。

あるいは、そんなおめでたい生き方をしている僕のような人間を見て、同じ人間に括られたくないと、あなたは深いため息をついているかもしれない。


先日の黒フェスで、そんな気付きを得た。

 


ボイメンのオタクにとって「関東在住」は紛れもない地方民の証で、その不満を東海地方の人にこぼすようなことがあれば反撃(笑)に遭ってしまう。

「東京にいればなんでも手に入ることをあなたはわかっていない」と。

なるほど、僕は花の東京に住んでいるというメリットについては、いささか不自覚であると言わざるをえない。


そして僕はこのご時世にあって、お仕事がお休みになることはあれど、お給料が目減りしたり、生活が苦しくなったりすることもなかった。

その意味で僕が失ったものはほとんどなくて、仕事がなくなったり収入が減ったり、あるいは人権を喪失するほどの激務の日々が始まった方々からしたら、非常に恵まれた環境にあると言えるのだろう。

この幸運については、薄々わかっていたような気がするけれど、僕がこの期間中もいつもと同じ金遣いの荒さを発揮したのは、困窮した日本経済を救うためではなかったような気がする。

 

そしてこのご時世にあって、松崎しげる御大と関係者各位のご尽力のおかげで、黒フェス2020が開催された。客同士・演者同士も距離をとり、感染症対策を行ったうえでの、久方ぶりのリアルイベントだ。

 このイベントの会場に行けたこと、これはとても「幸運」なことだったと、自分の恵まれ加減に無自覚な僕でもわかる。

当日が休みだったこと、家族がいないこと、職場から行動に規制がかけられていないこと、県境を跨がないで会場まで行けること、チケット代を払う経済的な余裕があること、そして自分がいま現在、健康であること。

 

だからぼくは「幸運な目撃者」として、あの日感じたことの一部をここに書き残しておこうと思う。

 

※ここまでが前置きです。なんとなく鼻につく文体になってますが、悦に入って書いたやつなのでそういわれても仕方ないと思います。すみません。

※またこのブログは相も変わらず自分のための備忘録なので、行けなかった人への配慮とかはあんまりできてないと思います。重ねてすみません。

 

さて、今日のおしながきです。

   

黒フェスでもボイメンがんばってたよ!

 

当日の様子について

まずは会場に向かう僕の備忘録(ツイート)から

  

当日は九州に接近していた大型台風の影響で、関東の天気もかなり不安定でした。

コロナ禍という黒い雲に覆われた暗い雰囲気の中、元気を届けようと奮闘するボイメンの姿がのぞく青空に重なって見えて、ひとりで勝手に余韻に浸っていたのでした。

 

会場の様子 

会場のTACHIKAWA STAGE GARDENは「後方が開放できます」と説明されていましたが、その言葉の通り、イベントホールの2Fスタンドの後方が、なんだか洒落たオープンカフェのようになってました。

音響のことを考えると、「後方の壁からの跳ね返りがなく、音の響きの面で気にならないこともない」(しげる談・要約)らしいのだけれど、開け放たれた窓からは夏空も覗いて、外で鳴いているセミの声も微かに聴こえて、晩夏のイベントにはすごくいいところだなと思ったり。冬は寒そうだけど。

 

オープニング番組

開演30分前くらいになったところで、派手なスーツを着た黒いおじさん(しげるだった)がカメラやスタッフを引き連れて、後方のオープンなエリアに現れました。

そのうちに奥から(また)やたら黒い人(茂出木シェフだった)が出てきたところで、事態を察した客席はざわつき、野次馬は増え、距離をあけて下さいとスタッフさんは声をかけて回りはじめ、そしてそのままオープニング番組収録が始まりました。

 

収録開始からまもなく、ボイメンの出番がやってきます。それまでは比較的穏やかに進行していた収録ですが、ボイメンの登場でその空気が一変!というか単純に3人とも声がでかい!元気!すごい!マイクの音割れは大丈夫かな……と心配になるくらいのにぎやかさでした。いつもの番組収録の現場でもこんな感じなのかな……笑

そしてその賑やかさにつられるように、会場のやじ馬さんたちの間に流れる空気も、少し柔らかくなったように、僕は感じました(個人の感想です)

 収録に登場したメンバー的にも、ボイメンが元気担当だったように思うのですが、開演前からその役目を存分に果たしてくれました!

※ちなみに裏に捌けるとき、メンバーは入り口にあったアルコールでしっかり消毒していました。えらいぞ~

 

フェス開幕

後方ではオープニング番組の余韻が醒めぬ中、ステージではオープニングアクトが始まります。魂のこもったいいステージだったのですが、なにより「発声禁止」のフェスに戸惑いを隠せぬ様子で、どうやって盛り上がっていいのか、いまいち分からない状態で開幕し、演目が進んでいきました。

(2番手に登場したTEEさんは、客席に向かって「歌って!」と煽った結果、カンペでスタッフさんから怒られちゃってました 笑)

そんな中で、ボイメンの出番がやってきます。

 

 ボイメンのターン

何もかもが久しぶりなのですが、まず出だしのNO LIMITで「ボイメンのライブが始まるんだ!」という感慨が襲ってきました。数は少ないものの、会場に灯り始めたメンバーカラーのペンライトを2階から眺めては、僕は押し寄せる情緒の波を2階スタンドの片隅で必死に抑えていました。

 配信がJOYSOUNDさんでそのうちに始まるのですが、これから現地からの感想をセットリスト順に書くのでネタバレが嫌だよ!って方はそっとブラウザを閉じてください。

 

 

①進化理論(Short)

進化理論は「ここが勝負だ!」というときに繰り出してくる、ある種必殺技的な曲だと思っているんですが、やっぱり今回も来ましたね!「ガンガンズダンダン」のフレーズとともに、BOYS AND MENの存在をフェス参加者の脳裏に刻み込むという意味もあるのかな。

客観的にみれば、会場もまだまだ盛り上がり方を分かっていない段階だったので、最初に「なんだか面白そうな人たちが出てきたな」と思わせる、つかみとしての役割はばっちり果たしてくれたのではないでしょうか。

 

②炎・天下奪取(Short)

発声禁止ライブの中でも楽しめる曲ってたくさんあって、そのうちのひとつがこの炎天下だなぁと改めて実感しました。

オタクにとってはペンラの振り方で盛り上がりをメンバーに伝えられるし、声を出さない分メンバーの動きを追う余裕もあるし、メンバーはいつも以上にキレキレの動きを見せてくれるし、すごく楽しかった。

そしてオタクじゃない一般のお客さんも、「拳を振り上げる」というところは一緒にできて、この辺りから会場の一体感みたいなものが、ちょっとずつ出てきたのかなと思います。

ちなみにボイメン登場の少し前から、会場外で鳴いているセミの声が大きくなっているのを感じていました。ただでさえ生で聴きたくてたまらない炎天下フルなのに、ここで来たらほんとうにどうしよう……と震えていましたがショート版でした。杞憂。

とにかく推しが「セミの声に負けんな」を歌い上げる姿はバリパに持ち越しということで。

 

③Oh Yeah!

MCを挟んで、いよいよお待ちかねの新曲タイム!

不肖まじやみ、みんなの魂の歌声をしかと聴きとどけさせていただきます…!

と気合を入れていたところ、会場に灯っていたペンライトが、イントロでメンバーが拳を上げるのと同じタイミングで次々と宙に突きあげられていく様子を目撃しました。

 

これめちゃくちゃアガるね~~~!!!

 

白状すると、僕はおうちでリリイベを見てる時にはペンラとか用意しておらず、ひたすら画面を凝視している必死なオタクだったので……ペンラの振り方とかについては一切考えもしていなかったのですが(それもどうなの?)、イントロの拳を上げる瞬間もそうだし、サビの振り付けもそうだし、親の顔より見たMVのおかげでなんとなくついていけるこの感覚……そしてその感覚が会場とリンクするこの感覚……やっぱり会場で浴びるライブはいいなぁ~~としみじみ思いました。

 

ペンラの話はちょっと置いといて、会場で見たパフォーマンスの話も少し。

 

どうしても僕は「推しシカ」になってしまうのですが、僕は「引きの絵」が公開された伝説のアフタートークを見逃した人なので、何とか全体の絵も見れるように頑張りたいなと臨みましたが……結果は惨敗

でもやっぱり、ダイナミックな動きができる広々としたステージでこそ、ボイメンの良さが出るよなぁということも、改めて感じました。シアターの存在もありがたいし、キャパの小さい箱だとメンバーが近くで見れて嬉しいけど、やっぱりボイメンには大きなステージを縦横無尽に駆け回って欲しいんだよな……

長距離移動のメンバーがやや移動に間に合わない所もあったけど、それはご愛嬌ということで 笑

 

あと歌!

何度かリリイベで聴いてきたけど、今回はその中でも最高の仕上がりだったんじゃないかな…

特に辻本さんと辻本推しにとっては、(舞台を除けば)これが2020年初めてのライブでの生歌唱の機会だったはずで……僕はその勇姿を見届けるためにフェスへの参戦を決めたような人間なので、もう大丈夫だとはわかっていながらも、やっぱり僕は緊張しましたよね。

しかし推し、そんな僕の不安な気持ちを吹き飛ばし、久々の大舞台で完璧に決めてくれました。大舞台での強さ、本当に頼もしい限りです。このお声が力強く響く日常が戻ってくるということが、どんなに幸せなことなのかを改めて思い知りました。

 

ヤングマン~B.M.C.A~

おーいぇで終わりかな~と思っていたところに、「発生禁止ライブで映える曲No.1」がやってきました!でかしたボイメン!!!

これはフェス後半で気付いたのですが、会場のお客さんの年齢層は割と高めだったこともあって(しげるのフェスだからそりゃそうか)、このBMCAで会場がまた一段と熱を帯びたのがはっきりとわかりました。つーじのアオリもアレンジなしの年齢を叫ぶ正統なやつで、老若男女に好かれたいというボイメンの理想形にかなり近いライブができたのではないかと思いました。

お付き合いいただいた会場の皆様、本当にありがとうございました

 

⑤MCコーナー

次の演者の方のため、ステージの準備ができるまでの間はMCコーナーということで、だいぶ長い時間、司会の方とのトークタイムがありました。

今回も元気の良さを褒めてもらい、つーじのグイグイの様子でひと笑い(このひとはどこに行っても強いよなぁ…すごいよなぁ…)という流れの後、司会の方が「車好きな子いるでしょ!」と勇翔さんをまさかのご指名!プラモデルを作る動画も3回ほど観てくれたとのことで……広がれ勇翔の輪……!

 

番外編:ファンキー加藤さん

ボイメンの出番が終わり、やや喪失感に包まれていたところ…次に登場されたのが、ファンキー加藤さんでした。

僕は昭和音楽にどっぷりつかった青春時代を過ごした変わり者なので、あんまり世代のロックを聴いてきませんでした。それでも曲が始まって「知ってる!ファンモンだ!」となれるわけで、めちゃくちゃ偉大なアーティストさんですよね。

その加藤さんのステージですが、これがめちゃくちゃにアツかった!曲間で酸素を吸引しながら、この世の中に負けるな!のメッセージを伝えてくれる姿に圧倒されていたのですが……その加藤さんが「ボイメンの後…やりづらいな…なんか俺に似たような奴いたな…あの赤いの…」って言ってたの、メンバーのみんなは聞いてたかな……僕はすごく嬉しかったな……

黒フェス初参戦。久々の有観客ライブ。やっぱりアドレナリンの分泌量が違う!笑


コロナ禍での制限はあれど、俺たちが奏でる希望に限りは無く。改めてそう感じました。とても幸せでした。

音楽を必要としてくれて本当にありがとう。そして松崎しげるさん、本当にありがとうございました。#黒フェスpic.twitter.com/SrOBoMdhq9

ファンキー加藤 (@funky_kato1978) 2020年9月6日

 

発生禁止ライブも案外楽しいよ!

前項で述べたように、事前の予想よりもはるかにボリューム感があったボイメンのステージが終わったのですが、その後もしっかりフェスを楽しませてもらいました。

やっぱりこのご時世にライブに出てくるアーティストさんたちだけあって、いまの状況に対するもどかしさみたいな想いをみなさん爆発させてくれました。

そしてOh Yeah!でボイメンが歌った想いは、黒フェスに登場したアーティストさんたちのそれと同じ向きを向いていて、この状況下で行われた黒フェスのひとつのテーマになっていたと思います。

それだけの想いを抱えて舞台に上がられたアーティストさんたちなので、それぞれに「作戦」を持って臨まれた方も多くいらっしゃいました。

これはレポだけでなく、これからはじまるバリパやその他のイベントにも応用できるものがあるのではないかと感じたので、ボイメン以外のアーティストさんの売りについて、僕が気付いた範囲ですがここでまとめて紹介します。

 

LE VELVETSさん

不勉強ゆえ、僕はLE VELVETSさんを全く存じ上げない状態で黒フェスではじめましての邂逅を果たしたのですが……ハーモニーがめちゃくちゃ心地よい……そして最初の曲でめちゃくちゃ長い(体感5分くらいあった)ロングブレスで圧倒されました

「盛り上がる」=「オーディエンスがワイワイ騒ぐ」というイメージがありますが、ハーモニーや歌声を聴くことで心がウキウキするのも「盛り上がる」ってことですよね!

ボイメンもガンガンハモりを利かせた曲にチャレンジしてくれてもいいんですよ……と思いつつ、バリパですぐに応用できる現実的なラインを考えると、夢☆Chu毒で「ロングアモーレ選手権」……とかはどうですかね?笑

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大黒摩季さん

名曲を惜しみなくメドレーで披露してくださったのですが、最後の「ら・ら・ら」では客席もハミングで参加。これはセーフなのか?アウトなのか?という会場のモヤモヤを吹き飛ばすようないたずらっぽい笑みで「どんなことにも抜け穴ってあるのよ」という摩季姉さん……かっこよかったなぁ……

しかし「ら・ら・ら」は歌詞が単純だということが、ハミング歌唱においては向いていたのかなぁと思ったり。

ボイメンでいえば炎天下のうぉーうぉーや、Forever and Alwaysのlalalaあたりで応用可能な手法かもしれません。

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HOUND DOGさん

HOUND DOGさんといえば、たしかももいろ歌合戦ではボイメンがレザージャケットでフォルティッシモにお邪魔したんじゃなかったっけ(うろ覚え)

今回も力強いステージを披露してくださったのですが、ボーカルの大友康平さんのマイクスタンドプレイがめちゃくちゃかっこよかった!マイク取れない?客席に飛ばない?機材壊さない?というレベルの振り回しっぷりに興奮しました!

ボイメンもヤンの兄さんたちがシャウとかでたまにやりますが、マイクスタンドぐりんぐりん回すの、久しぶりに見たいなぁ……

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ももクロさん(リモート出演)

リモート出演になったももクロは、リモートだからこそのチャレンジということで、伴奏はピアノ一本の「オトナなももクロ」を演出。

僕は有名どころをわずかに知っているレベルの人間なのですが、普段のにぎやかさに隠れがちな、楽曲が持っているメッセージ性が強く表れていてグッときました。歌詞を聴かせたい曲なんかでは、こういうチャレンジをする機会があってもいいですよね。

ちなみに早速帰り道に「天国のでたらめ」「笑ー笑」購入させて頂きました。

あと!黒フェスにボイメンを推挙していただいたみたいで!ほんとうにお世話になっております……今後ともよろしくお願いします。

 

youtu.be

 

 

松崎しげるさん

このブログ内では散々「しげる」と呼び捨てにさせて頂いていますが、この時期にフェスを開くという判断をしたしげるさん、本当にすごいお方だなと思いました。

ともすると「時期尚早」と叩かれかねないところですが、ご自身の持つ大御所としての発信力と、その影響力と背中合わせの関係にある責任感と、両方を持ち合わせたうえで「音楽のは不要不急じゃない!」という強い想いを、この「黒フェス」という形に結実させられたのは、やはりしげるさんだからだったのではないかと思いました。

そしてそんな強い熱意で開かれたフェスに、ボイメンを呼んでくれたしげるさん!本当にありがとうございました!

 

さてそのしげる御大ですが、やっぱり歌がめちゃくちゃうまい!小細工なしの歌声で勝負してきたからこそ、半世紀にわたってご活躍されてきたんだよな…と、その偉大さに改めて気付かされました。

この日歌われた「スタートライン」、しげるさんもカヴァーされているようで。めちゃくちゃ刺さったので紹介しておきます。

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現場は「神秘体験」の場

これまでライブのレポのようなものをお届けしてきましたが、最後に黒フェス中に起こった出来事から感じたことを少しだけ。

 

オープニング番組の収録が始まった頃のことです。しげる御大やたいめいけんの茂出木シェフの様子を、僕ははじめ自席から眺めていました。

しかしそのうちに脇から見覚えのある学ランがひょっこり現れたので、ディスタンスに気をつけつつ近づいてみると、マサルさんとゆーちゃむとつーじでした。

 

金銭の発生しない接触は自分ルールに反する気がして、しかしここで見ないのもなんだか変な気がしたので、自席を離れ、なるべく邪魔にならない場所から一部始終を見守っていたのですが……カメラの画角の外から収録を眺める彼らは、やっぱり(べらぼうに顔の良い)普通のお兄さんたちでした。彼らのそういう姿を見たのも随分と久しぶりな気がして、すごく懐かしい気持ちになっていました。

しかしまぁ、群衆の頭の間から彼らの姿をのぞき見ているだけなのに、膝はガクガク、手汗びっしょりのひどいありさまで……いままで特典会や握手会のたびに感じていた、「推しが現実に存在することをこんなにも確かめられてうれしい反面、推しが自分と同じ空間にいるということにとてつもなく緊張する」というあの感覚も、やっぱり同時に蘇ってきたのでした。

 

コロナ禍がはじまって、いろんなイベントがオンラインになりました。

そのおかげで、本来ならば物理的に行くことが出来ない場所でのイベントでも、ネット環境があれば、その時間にPCを開くだけで彼らの姿やトークやステージを見ることができる世の中になりました。在京=ボイメン地方民の僕にとっては、これは恩恵以外の何物でもありません。

 でもその反面、画面の向こうに手軽に推しを見ることができるようになったことで忘れかけていた、「推しも僕と同じ人間である」ということを、今回の黒フェスで思い出せました。

 

「アイドル」の元の意味は「偶像」である……という話を始めるとまた長くなってしまうので今回はやめておきますが、芸能人がメディアを通して見せる姿は、どうしてもその人間の一部を切り取ったものになってしまいます。見目麗しい人々が集う芸能界で、短時間でなるべく強い印象を残すため、自己の一部分の特徴を強調したキャラクターを演じることもあります。

その結果、芸能人はいつしか「人間性」を奪われ、視聴者からは違う世界の生き物として扱われ、メディアへの露出だけでなく、プライベートな部分も含めて批評の対象とされてしまうということが、あちこちで散見されています。

そしてとても残念なことに、僕もそのような視線を、推しに向けてしまいかねない人間でした。

しかしそのバイアス(メディアが悪いという批判の意味はまったくありません)を解消することができるのが、「直接推しがこの世に生きている姿を眺める」という行為なのかなと、今回の経験で改めて思いました。

 

現代日本ではほとんどなじみのない話かもしれませんが、だいたいの宗教においては「神の存在を認識する」ことが信仰を深める基本中の基本となっています。その一例が偶像崇拝であり、神の絶対性の高い宗教では神秘主義(主に修行などによって神が存在することを身体的に体験しようとする立場)などに表れてくるのですが、僕は宗教の専門家というわけではないので話半分に聞いておいてください。

 

誰と比較するでもなく、ただ「眼前にとてつもなくかっこよくて好きで推せる人が存在する」という一種の神秘的な体験をする。

推しを直接拝むことによって、推しに対する信仰を深め、同時に推しが架空の世界の神様ではなく、この世で呼吸をして、喜んだり悲しんだり傷付いたりする生身の人間だということを理解する。

そしてそんな推しを推している、自分という人間の思考や行動を再度見つめ直す。

 

どれだけ便利な世の中だって、大切な推しに何度でも惚れ直して推し続けるためには、この足で向かってみっともない姿を晒すしかない。むしろそうして、生まれてしまう小さなズレを修正し続けることができるなら、それがいい。

迷えるオタクである僕はそのことに、改めて気付くことができました。

 

本当に長くなりすぎたので、最後に一言だけ……

 

 

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